メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2018.7.20この記事の所要時間:約8分

日本は世界的にも超高齢社会と呼ばれています。この超高齢社会における、さまざまな課題に対して、私たち日本人はどのように考え、行動していけば良いのでしょうか? 2018年6月、メットライフ生命が「#老後を変える」サミットを東京・赤坂で開催しました。

北米ではゴールデンイヤーズ、日本では暗黒時代。老後のイメージがなぜ違う?

冒頭に登壇した、メットライフ生命保険株式会社の代表執行役 会長 社長のサシン・N・シャー氏は、デニムにスニーカー、ジャケットというスタイルで登場。サミットらしからぬ服装について同氏はスニーカー通勤を同社が推奨することになったと、その理由を説明しました。

 

スニーカースタイルで登壇するメットライフ生命保険のサシン・N・シャー代表 スニーカースタイルで登壇するメットライフ生命保険のサシン・N・シャー代表

 

「ウォーキングをすることで肉体と精神がより向上することに期待しています。日本は超高齢社会といわれて、悲観する方もいます。しかし、北米では定年後の人生をゴールデンイヤーズと呼び、多くの人が楽しみにしています。日本では暗黒時代などという悲観的な言葉も聞きます。なぜでしょうか? 今回のサミットは、『老後』に対する考え方について、今までの議論では生まれてこなかった、新しい議論を重ねるために開催します」

同氏が呼びかけ、サミット会場で参加者に配られたタブレット端末で老後のイメージをアンケートでとると、「孤独」や「お金がない」などのネガティブな回答が頻出。日本が直面している課題を共有したところで、サミットがスタートしました。

 

アンケート回答用に配られたタブレット端末 サミット参加者にはタブレット端末が配られ、アンケートに答えるとリアルタイムに結果表示する仕組み

 

認知症は年をとれば誰もがなる可能性がある。だからこそ“自分ゴト化”して考えよう。

最初のセッション「認知症の未来:日米の最新の研究からわかる新しい視点」は、パネリストに英国にあるWorld Dementia Council(世界認知症審議会)のメンバーでもある黒川清氏(東京大学 名誉教授)と、認知症のスペシャリストとしても知られる髙瀬義昌氏(日米医学医療交流財団 理事 兼 たかせクリニック理事長)、モデレーターにマリア・シャルヴァ氏(サボニックス 代表取締役社長)が登場。髙瀬氏が冒頭で「認知症を引き起こす病気は80種類以上あるが、日本ではその中の1つであるアルツハイマーばかりに注目が集まってしまっている」と話しました。「認知症になると、もうおしまい、みたいな言葉をよく聞きますが、症状が回復することもあるし、楽しく暮らしている方も多いのです」

 

東京大学名誉教授の黒川清氏(左)と、日米医学医療交流財団理事の高瀬義昌氏(右) 東京大学 名誉教授の黒川清氏(左)と、日米医学医療交流財団 理事 兼 たかせクリニック理事長、の髙瀬義昌氏(右)

 

黒川氏は「認知症になる確率は60〜70代で1〜5%。90歳以上で40%。人類が長生きになったから出てきたわけです」と続けます。その上で、黒川氏は参加者に対して、「私も80代になりましたが、皆さんも誰かの名前が浮かばないことなどはありませんか? あるでしょう? それだってもう軽い認知症といえるかもしれません。老いと共に、これは当たり前のことなのです。それなのに、みんな認知症を“自分ゴト”にしない。今後は認知症を自分のこととして全員が考えていくべきです」

老いについて、黒川氏はさらに「人生にピークをつくるから老後ができる」と話し、特に日本人は職業人が終わる時(退職)が、そのまま人生のピークといった認識がすり込まれていることについて問題を提起しました。「会社を辞める(定年退職する)が、社会人の終わりではない」と断言します。この言葉は参加者の共感を得たようで、多くの方がうなずいていました。

「ただ、健康になりたいからと、無理に運動することはお勧めできません。楽しくやることが一番重要。誰かにやらされている、そういう考え方は取り払いましょう。常に自分の頭で考えることを忘れず、好奇心をもって自分で調べることを忘れてはいけない」

80代とは思えない身のこなしと話しぶりの黒川氏から出てくる言葉だけに、より説得力があります。

高齢社会は人口の中で高齢者の割合が増える社会。それは人類の新しい変化。

続いてのセッション「『明るい超高齢社会』は実現できるのか:アカデミアと政策関係者の視点」ではパネリストとして秋山弘子氏(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授)と、江崎禎英氏(経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官 兼 内閣官房 健康・医療戦略室次長)が登場。モデレーターには近藤奈香氏(ザ・エコノミスト インテリジェンスユニット エディター)を迎え、日本の高齢社会について話し合われました。

秋山氏は高齢社会の課題として、以下の3つを挙げました。

1. 個人の長寿化 → 一人ひとり、人生100年の設計が求められる
2. 人口の高齢化 → 社会のインフラ(ハード&ソフト)のつくり直し
3. Global aging → イノベーションの推進市場は大きい

1つ目については、「#老後を変える」編集部でもこれまで多く言及してきましたが「100年の人生設計は私たちの祖父母の時代には想像もできなかった長寿時代がもたらした新たな可能性である」と述べています。また、2つ目について秋山氏は「現在の社会制度などは、人間が100年生きることを想定してつくられていない。だからこそ、見直しをかけていくべき」と話しました。

 

秋山弘子氏(左)と江崎禎英氏(右) 東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授の秋山弘子氏(左)と、経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官(兼)内閣官房 健康・医療戦略室次長の江崎禎英氏(右)

 

これについて、江崎氏も同意し、次のように述べました。

「日本は今後さらに高齢化が進むため高齢者が急増するという話を聞きますが、それは違います。今後64歳以下の若い世代の人口は減りますが、65歳以上の人口はそれほど増えません。つまり、今後の高齢化の進展とは、若い世代の人口減少によって結果的に高齢者の割合が増えることなのです」

つまり、過去と比べて多くの人々が65歳以降も生き続けられるようになり、高齢者の割合が増えたのです。グラフを示しながら江崎氏は、日本の人口構造について、50歳を基準として年齢層別の割合を見ると、明治維新のあった1868年から1960年までは人口の大半が50歳以下であった状態(19世紀型)が続いていたが、1965年から1985年頃にかけてその構造が大きく変化し、2050年ごろから50歳を基準として高齢者と若い世代が半々くらいになり、その後そうした状態(21世紀型)が安定的に続くと説明しました。

「現在はまさに19世紀型から21世紀型へ変わる過渡期なのです」と江崎氏。「これを悲観的に見るか、肯定的に見るか? 平成26年の内閣府の調査では、80歳近くまでは男女ともに8割前後の高齢者が身体的に健康な状態を維持していることがわかっています」

つまり、高齢者であっても、健康で活動することができる人の割合が昔と比べて上がっているということです。秋山氏も「1992年~2002年の10年でも、高齢者の通常歩行速度を比べると男女ともに11歳若返っているという調査結果もあります」と話します。

高齢社会において、悲観的になりすぎる必要はないという二人の見解については多くの参加者が同意。江崎氏は、こうした社会背景に加え、さらに病患の性質変化について言及します。

「昔の医療は、栄養不足や不衛生、戦争での負傷などにより、感染症やケガとの戦いが基本でした。しかし、経済の発展、医療技術の発達で栄養状態、衛生状態が改善すると共に、多くの感染症に対する効果的な治療薬も発見され、感染症のウエイトは大きく下がりました。その結果現在では、食べ過ぎ、運動不足、ストレスに起因する生活習慣病や老化に起因する病気が主流になっているのです」

こうした疾患は感染症と違い、ウイルスや細菌などの原因を退治すればよいというものではありません。病患の発生には、患者自身の生活習慣に起因するさまざまな要因が絡み合い、それを防ぐには発症後の対処療法ではなく、重症化する前に対応する仕組みづくりが大切です。

秋山氏は冒頭に挙げた3つ目の課題「Global aging」を引き合いに出しながら、これまでに経験したことのない時代がやってきている今、一つの会社や国、団体という単位を取り払い、“オープンイノベーション”を推進していくべきだと話し、現在取り組んでいる鎌倉にある産学官民のオープンイノベーションの場「リビング・ラボ」の例を紹介。国や団体単位ではなく一人ひとりがアイデアを持ち寄って新しい手法を生み出しイノベーションを起こす必要性とその機会があることを強調しました。

この2つのセッションの後、次に写真と共に掲載する2つのプログラムを経て、山口浩一郎氏(メットライフ生命保険株式会社 取締役 代表執行役 専務 チーフディストリビューションオフィサー)が、統括として、再び「老後」のイメージを参加者にアンケートを実施。結果は開催前と比べてポジティブな言葉が並ぶ結果になりました。

 

クリス・クレイグ氏 この他「エコノミスト調査の視点」では、ザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのマネージング・エディターのクリス・クレイグ氏がメットライフ生命と共同で行った健康管理や金融資産などに関する国際調査報告について解説。

 

 

人生100年時代実現へのロードマップ:産業界とその受け手側の視点の様子 「人生100年時代実現へのロードマップ:産業界とその受け手側の視点」ではパネリストに株式会社タニタヘルスリンク 代表の丹羽隆史氏や、野村資本市場研究所 研究部長の野村亜紀子氏、特定非営利活動法人アスリッド 理事長の西村由希子氏、メットライフ生命の執行役専務 チーフストラテジーオフィサーの幸津ウェブスター氏などが登壇。モデレーター慶應義塾大学の経営管理研究科准教授 医師・博士の後藤励氏により、サービスを提供する企業側と、そのサービスの受け手である人々の視点について語られました。

 

 

開催前と比べてポジティブなアンケート結果 サミットの最後に再びアンケートを行うと、結果は開催前と比べてポジティブなものへ。

 

人間が100年生きるこの時代は、人生を2回送れるということ。

人生100年時代といわれていますが、生物学的には120年まで人間は生きることができるともいわれています。そう考えると、これまで節目の年とされてきた還暦の60歳はまだマラソンでいうところの、往路が終わった折り返し地点。同じ年数を復路として人生を歩んでいく上でも、自分の人生設計を早くから行なっていく必要がありそうです。なにしろ、これまでに経験したことのなかった時代ですから、前例から学ぶこともできません。

「#老後を変える」編集部では、サミット開催前に、黒川氏に個別でインタビューを実施。同氏はこれからの時代について日本人が不安を抱く理由について、次のように教えてくれました。

 

黒川氏 個別インタビューの様子

 

黒川氏は日本の男性はものがいえない、それがよくないと警鐘も鳴らします。同氏は2016年発行『規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす』(講談社)でも、日本社会の構造について厳しく言及。

「日本人は、子どものころから誰かに教えてもらってそのとおりにやることに慣れてきました。でも、これからの時代はそれでは駄目です。そもそも前例がないのですから。人類の長寿化について、教えてくれる人がいないから不安になる、参考にすべき前例がないから不安になる、国も信用できないから不安になる——そうではなくて、自分の人生を自分で設計するために、好奇心をもって自ら調べ、行動するようになってほしい。世界の多くの人たちはそうやって子どものころから知性を身につけていくのだから」

自分の未来を変えるために、自分で考え、動くことから始める——「#老後を変える」サミットでは、この一見当たり前のようでいて、なかなか実行しづらいことを、現役世代に提示する最初の機会だったのかもしれません。未来をネガティブにするのか、ポジティブにするのかは、一人ひとりの行動によって変わるのではないでしょうか。

 

 

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Posted: July 20, 2018