メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2018.3.23この記事の所要時間:約6分

ハイシニアの今が一番楽しい

80才を過ぎてからプログラミング言語を学び、ひな壇の正しい位置に雛人形を配置するゲームアプリ「hinadan(ひな壇)」を開発して注目を集める若宮正子さん(以下、若宮さん)。
御年82才にして各方面から取材や講演依頼が殺到し、政府の「人生100年時代構想会議」の有識者に選ばれたり、この2月にはニューヨークの国連本部でスピーチも行ったりするなど多忙を極める毎日は、「これまで生きてきた中で一番楽しい」と若宮さんは話します。

周囲に「マーちゃん」の愛称で親しまれている若宮さんに、老後をいきいきと過ごす楽しみ方のコツを教えていただきました。

 

若宮正子さん

 

60才頃に出会ったパソコンで世界が変わった

若宮さんがパソコンと出会ったのは、大手銀行を定年退職した、60才の頃なのだそうです。当時はパソコンブームが起こる直前で、まさに時代を捉えた先駆けでした。

「始めたのはまぁ、もの好きだったからでね。それまでは家庭で買えるような値段のパソコンなんてなかったんですよ」

旺盛な好奇心からパソコンを購入し、設定方法や使い方を教えてくれる教室などもない中、3ヵ月かけて独学でインターネットに接続するまでこぎつけたのだそうです。

やりたいことがあったら、自分でなんとかやってみる。そんな若宮さんのマニュアルに頼らない姿勢は自由な発想を呼び、意外な発明も生み出しました。
通常は表計算に使うソフト「エクセル」の、セル塗りつぶしや罫線機能を使って絵柄を描く「エクセルアート」です。

 

若宮さんが作成したエクセルアート 若宮さんが作成したエクセルアート

 

「そもそもは表を見やすくするためにある機能なんでしょうけど、あらこれ面白い、いろんな色がつくんだったらつけてみようかしらと思って。そのうちにだんだん、グラデーションでやったらいいとか、パターンで縞模様にしたらいいとか……」

同年代の仲間に教えると、刺繍や編み物に通じるところがあって楽しいと広まっていきました。

年を重ねるにつれ新しい技術に尻込みするようになる人は、少なくありません。基礎から覚えるなんて難しそうだ、今から始めてもモノになるまでに時間がかかる、などと考えると手を出しにくくなってしまうものですが、若宮さんは「基礎的なことは分からなくても、自分なりにやってみればいい」といいます。本来の使い方にこだわらず、自分のやりたいように使ってみたらパソコンでできることも目の前の世界も、どんどん開けていったのだそうです。

失敗を恐れないからチャレンジできる

小さい頃から好奇心が強く“やりたいと思ったことはやる子ども”だった、という若宮さん。

家族からも「マーちゃんがやるって言ったらやる、行くって言ったら行く、誰も止められない」と言われていたそうです。

「小学4年生の時も、住んでいた兵庫県生野町(現朝来町)から母の里まで電車を乗り継いで1時間半ほどの場所に1人で行って1人で帰ってきました。親も『どうせマーちゃんが行くんだから』って心配していなかったみたい。時刻表を調べて行くわけですけど、子どもの頃から“間違ったらこわい”っていう気持ちは無いんです。電車に乗り間違ったって死なないですから」

若宮さんのお話の中には、言葉を変えて繰り返し出てくる信条があります。

子どもの頃の「電車に乗り間違ったって死なない」、国連で英語のスピーチをするときも「間違ったって言い直せばいいだけ」という、失敗を恐れない精神です。
若宮さんを一躍有名にした「hinadan」アプリ開発も、失敗を恐れないからこそチャレンジできたといいます。

 

若宮正子さんが開発した「hinadan」アプリ 若宮正子さんが開発した「hinadan」アプリ

 

「もしもhinadanができあがらなかったとしても、“プログラミングの世界ってこうなっているんだ”と分かるだけでも楽しいなと思って。それを知るだけでも無駄じゃないですから」

失敗さえも楽しみに変えてしまう若宮さん。やりたいことはやってみればいいという子どもの頃からの「マーちゃん精神」が、80才を超えた今でもチャレンジを続けてさせてくれるのだそうです。

元気の秘訣は今を楽しむこと

各方面からひっぱりだこで、毎日どこかしらに出かけているという若宮さんですが、疲れた様子はみじんも感じさせません。元気の秘訣を聞いてみると、
「年をとることに不安はありません。人間いつかは死ぬんだから気にしすぎないで、それよりも生きてるうちをめいっぱい生きることが大事かな。やりたいことはいっぱいあるし、おいしいものは食べとかなきゃもったいないし」
暮らしの中に決めごとも作らないという若宮さんは、「何時に起きて何をするというスケジュールも決めていないので、その日暮らしです」と笑います。
今日すること明日することの楽しみで頭がいっぱいなので、ストレスを感じることもないんだそうです。

時代は変わるからこそ、自分が何をやりたいか分かっていることが大事

これまで82年の人生を「目の前を歴史絵巻が通り過ぎていったよう」だと言う若宮さん。
戦中戦後での教育や価値観の大きな変化、社会主義から資本主義までの経済の移り変わり、次々と生み出される新技術と世の中の発展。
全て見てきて感じたことは、「時代はどんどん変わっていくものだから、凝り固まらないで柔軟に生きることが一番大事」だったそうです。「柔軟に生きるということは、決して流されることではなく、自分の頭で考えること。自分がやりたいことのイメージをしっかりと持っていること」と若宮さんは言います。

「プログラミングもそうで、たとえばアプリを作るときも、スキルがある人よりも何を作りたいかがある人の方がいいんです。スキルが足りなければ誰かに助けてもらえばいいけれど、作りたいモノがなければ手助けのしようがない」

さらに若宮さんは、この先の世の中を見据えてこう言います。

「これからどんどんAI(人工知能)が進んだら、おそらく今のプログラミングなんてなくなっちゃうと思うの。コンピュータと会話しながら、問答をしながら作る時代が来ると思う。そうなったら何をどんなふうに作りたいかというイメージを伝えられなければしょうがないでしょ」

 

スキルよりも何を作りたいかが重要と語る若宮さん スキルよりも何を作りたいかが重要と語る若宮さん

 

若宮さん自身、大きな時代の変化の中で常に自分が何をしたいのかを考えて生きてきたと言います。
遠く離れた人と出会いたかったからパソコンでインターネットを始め、シニアが楽しめるアプリが欲しかったから「hinadan」を作り……今やりたいことは、なんでもやってみる。
その生き方が世間から注目を集めているのは、自分が変わったというより「時代が変わったから」だと思っているそうです。若宮さんの生き方に、たまたま時代が合ったから。
時代が変わることを恐れず、失敗することも恐れず、今を楽しむ。
いきいきとしたシニアライフを過ごすには、そんな心の持ちようが大事なのかもしれません。

 

若宮正子さん

 

<若宮正子さん プロフィール>
1935年(昭和10年)生まれ。高校卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行し営業や企画などを担当。

定年退職後、母親の介護を行いながら独学でパソコンを修得する。1999年、シニア世代の交流サイト「メロウ倶楽部」の創設に参画し現在は副会長を務める。担当した「メロウ伝承館」(戦中戦後の人々の記録を後世に残すプロジェクト)は国連情報社会世界サミット大賞日本大会で最優秀賞を受賞する。さらに表計算ソフト「エクセル」で絵柄を描く「エクセルアート」も考案。2014年TEDトークでプレゼンショーを行う。

2017年iPhoneアプリ「hinadan」をリリースし、6月に米国アップルによる世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待される。2018年2月、高齢者とデジタル技術をテーマにした国連での会議で基調講演を行う。

著書に「花のパソコン道」(インプレスR&D)、「60歳を過ぎると、人生はどんどんおもしろくなります」(新潮社)、「明日のために、心にたくさん木を育てましょう」(ぴあ)

 

 

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Posted: March 23, 2018