メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2017.12.1この記事の所要時間:約6分

歌舞伎は見るものではない、行くものだ!

「歌舞伎って興味はあるけれど、ハードルが高い・・・・・・」そんな風に思う人は、案外多いのではないでしょうか。そこで今回は、歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎さん(以下、おくださん)に、初心者に向けた歌舞伎の楽しみ方を教えていただきます。
“歌舞伎の解説者”ではなく、“歌舞伎ソムリエ”というユニークな肩書。これは、ワインのソムリエがお客さまとコミュニケーションを取りながら、食事を楽しむためのワインを薦めるように、歌舞伎の楽しみ方を伝える存在でありたいという思いが込もっています。
歌舞伎が初心者にとってなかなかハードルが高いと感じられるのはなぜなのか、おくださんに聞いてみました。

 

歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎さん 歌舞伎の楽しみを伝える“歌舞伎ソムリエ”のおくださん

 

「見慣れていない人にとって、歌舞伎は遠い存在。どう楽しめばいいかわからない人が多いでしょう。多くの場合、2つのハードルがあります。一つは中身を知らないこと。ストーリーや役者になじみがないということですね。もう一つは劇場での過ごし方がイメージできないこと。劇場に行ってどう楽しめばいいんだろう?と戸惑ってしまうのです」この2つのハードルがあるために、初心者はなかなか一歩が踏み出せないのではないか、とおくださんは話します。
そんな初心者が一歩踏み出し、歌舞伎を楽しめるようになるための心構えを聞いてみました。
「歌舞伎は見るものではなく、行くものなんですよ。スポーツ、旅行、テーマパーク、ショッピング、パビリオンと同じように楽しい遊びと捉えてほしいですね。多くの人は、何百年続く歴史や、日本の歴史・着物文化を学ばなくちゃ、と思って固く構えてしまいがち。そうではなく、もっと柔らかく考えて遊びに行ってほしい。もともと歌舞伎は、江戸時代に街のエンターテインメントとして、町人・庶民がつくりあげたショービジネス。商業演劇・大衆演劇に位置付けられます」

おくださんが言うには、歌舞伎というエンターテインメントの中で遊んでいるうちに、素養が身に付いて親しみが湧いてくるもの。そんな気楽さで付き合えば良いそうです。

生真面目に見ると場の空気が硬くなる。ライブ感覚で楽しもう

「初めての観劇で、いきなり歌舞伎を理解しようと構えていると、緊張して体も心も硬くなってしまいます。また、そのように硬くなって歌舞伎を見ているお客さんがいると、不思議と場の空気も硬くなってきてしまうのです。もっともっと肩の力を抜いて、『遊びに行くモード』で拍手をしたりどよめいたりしてほしい。好きなミュージシャンのライブに行くのと同じ感覚で楽しめばいいんですよ」

とはいえ、歌舞伎とライブでは掛け声1つ取っても違うと思いますが、その点はどうすれば良いのか、おくださんに尋ねました。
「歌舞伎には『成田屋!』『播磨屋!』といった掛け声がありますが、これはアイドルのコンサートにおけるファンのオタ芸(ステージ上の演者を応援する目的で観客が行う、独特の踊りや掛け声のこと)と同じで、役者に対する観客側からのレスポンス。そうは言っても、いきなり掛け声を発するのはハードルが高いものです。いい芝居を観た瞬間に自然とため息が出る、自然に拍手をする。そんな風に、場の雰囲気づくりに参加するところから始めてみるのはいかがですか」と、おくださんは観劇に対してのハードルをグンと下げてくれました。

 

歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎さん ライブ感覚で歌舞伎を楽しむことを勧めるおくださん

 

「もちろん『歌舞伎に行く私』という権威を大事にする人もいますし、日本の伝統芸能である歌舞伎自体にある種のステイタスがあることは事実です。けれど、歌舞伎座は18,000円の桟敷席から、4階席で1幕だけ見る800~1,600円の一幕見席まであり、間口が広い! 着飾って楽しむ社交場としても、1幕をさっと見る劇場としても楽しめる場なのです」
おくださん自身も一幕見席での観劇からスタートしたそうです。気軽に見られる一幕見席のチケットですが、当日販売のみとなっており売り切れには注意が必要です。その他のチケットについてはインターネットで予約ができるので、気になる公演を見つけたらその場で手配することをお勧めします。
さらに、鑑賞するだけではない楽しみ方も教えてくれました。
「休憩時間に歌舞伎座でお弁当を食べたり、食堂で食事をしたり。また鑑賞後に街へ繰り出し、一杯飲みながら余韻に浸るというのもいいですよね。これこそ大人の楽しみですし、周辺の街にも活気をもたらします。これらをトータルで楽しむのが、歌舞伎を楽しむということだと思っています」
上演される芝居だけを生真面目に見るのではなく、歌舞伎にまつわるすべてを面白がろうとする気持ちが大切、とのことです。

「歌舞伎が見たい!」と思い立ったときが行き時。ふらっと立ち寄ってみよう

初めて歌舞伎を見に行く場合、できるだけ初心者にも易しく、前提知識がなくても楽しめる演目を選びたいものです。おくださんにお薦めを聞いてみました。
「例えば映画であれば、お薦めの作品名を挙げたとしてもレンタルビデオ屋さんでその映画を借りて観ることができます。ですが歌舞伎の場合は、お薦めしたところで、それが今、上演されているかというとそうとは限らない。タイミングがずれていて、上演はずっと先、という場合もあります。お薦めされた演目はまだ先だから今はいいや、となると結局、歌舞伎に行く機会自体を逃してしまうことにもなりかねません。自分の中で『歌舞伎に行きたい!』と気持ちが盛り上がったときが行き時。思い立ったときの気持ちを大事にして、ぜひ行ってみてほしいのです。それが、歌舞伎を楽しむ一番の近道なんですよ!」

大事なのは歌舞伎に行きたいという気持ちが冷めないうちに行動することだと、おくださんは熱く語ります。それでは、どのような基準で見に行く演目を選べば良いかを聞いてみました。

「その時に開催している演目の概要を何本か眺めてみると、どれか1本くらいは自分の興味を引く演目、または気になる役者さんの演目が見つかるはず。それを見に行くことをお勧めします。効率的に、良い作品だけをインプットしようと欲張らないことです」
あまり構えずとも、その時に上演している演目を観に行けば大丈夫そうですね。「自分のフィーリングを大事にしてイベント感覚で出かけてほしい、行くことで自然とインプットが得られるはずだから」と、おくださんは語ります。

また、歌舞伎というと観客はシニア世代が多いというイメージがありますが、実際にはそうでもなく、近年劇場は子どもから年配の方まで幅広い層の観客で賑わっているそうです。
「今、漫画の『ONE PIECE』を歌舞伎で行うなど、子ども受けする歌舞伎もやっていて、観客席におじいちゃん、おばあちゃんとお孫さんの組み合わせもいらっしゃっています。ONE PIECEを知らないおじいちゃん、おばあちゃんにお孫さんが『ルフィ(漫画『ONE PIECE』の主人公)っていうのはね、手が伸びるんだよ』と楽しく説明している光景も見られるのですよ」
歌舞伎は日本文化を粛々と学ぶというより、世代を超えて元気になれる空間だと、おくださんは笑顔で話します。

「また、私が開催している歌舞伎を楽しむ会『おくだ会』では、若い方から年配の方まで、いろいろな世代が集ってきます。歌舞伎をツールとして、幅広い世代で仲が良くなるきっかけになっているんです。歌舞伎を通じて各世代が活性化する——その鍵を握るのは、30~50代の大人世代だと、私は思っています」
歌舞伎を話題にして盛り上がっているうちに知らずに知性や教養が身に付いていく、また、世代を超えた交流により若い世代は大人世代から、大人世代は若い世代から刺激を受ける。老後というと同年代だけが寄り集まるイメージがありますが、歌舞伎を遊びとして楽しんでいれば、それが別々の年代間の交流を促し、それぞれが楽しく豊かな老後を送るきっかけにもなるでしょう。
今からでも遅くありません。「歌舞伎に行きたい!」と思ったら、まず足を運んでみませんか?

 

おくだ健太郎さん

 

<おくだ健太郎さんプロフィール>

名古屋生まれ。歌舞伎ソムリエ、歌舞伎のイヤホンガイド解説者。
大学時代、歌舞伎にのめり込み、「一幕見自由席」に通いつめる。卒業後、歌舞伎公演のイヤホンガイドの貸し出しカウンタースタッフとして勤務し、ガイドの書き手・語り手を志す。イヤホンガイド解説者としてデビューし、NHKハイビジョン番組「歌舞伎バラエ亭」に出演。現在は、歌舞伎を楽しむ会「おくだ会」を開催し、幅広い世代に歌舞伎の見どころトークを精力的に行っている。http://okken.jp/

 

 

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Posted: December 1, 2017