メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2017.9.15この記事の所要時間:約7分

17年後の日本、敬老の日に3人に1人が祝福される

2017年9月18日は敬老の日です。敬老の日は、1947年(昭和22年)に兵庫県多可郡野間谷村(現在の多可町八千代区)で、「ご老人を大切にし、お年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」と、9月15日に敬老会を開いたのが始まりといわれています。そして2003年(平成15年)から9月の第3月曜日が敬老の日となりました。

総務省統計局によると、65歳以上の高齢者人口の割合は1950年(昭和25年)には4.9%となっていましたが、1955年(昭和30年)には5.3%と増加し、2016年(平成28年)9月15日現在の推計では、65歳以上の高齢者人口は3,461万人で、総人口に占める割合は27.3%となっています。

 

65歳以上の高齢者人口の割合 出典:2016年(平成28年)総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)」を基に作成

 

国立社会保障・人口問題研究所による推計(日本の将来推計人口・平成29年推計・出生中位・死亡中位)によると、今から17年後の2034年には32.4%と約3人に1人が65歳以上の高齢者になり、孫や家族からプレゼントやギフトで祝福されることになります。

 

財政難の島を立て直したのは、当時64歳の町長だった。

日本は世界で「課題先進国」と呼ばれています。今後、少子化と高齢化が進み、働く人の数が減り、総人口が減少傾向にあります。こうした人口変化は世界的に進行すると見込まれており、日本はその先頭を歩んでいるといえます。

この「課題先進国」で、注目を集めているのが海士町(あまちょう)です。日本海の島根半島沖合約60キロに浮かぶ隠岐諸島の島の1つ中ノ島にある町で、人口は約2,400人、このうち1割が島外からの移住者、いわゆる「Iターン」の人です。そして「Iターン」に背中を押される形で島出身の若者も「Uターン」で戻ってきています。少子化で統廃合寸前だった島内にある島根県立隠岐島前高等学校も全国から生徒が入学し、2012年度から学級増になりました。2015年には、文部科学省「スーパーグローバルハイスクール」に指定されています。「課題先進国」の解決策が見えてくる島として、多くの政治家・官僚・学者・教育者などの視察が後を絶たないようです。

 

海士町のビーチ 夏は観光客でにぎわう海士町のビーチ(筆者撮影、以下同)

 

この海士町の町長が、山内道雄さんです。1938年生まれの山内さんは、2002年に64歳のタイミングで海士町町長になり、現在もなお、民間企業での経験を活かした大胆な行財政改革と産業創出策を精力的に行っています。

 

海士町の役場には「自立・挑戦・交流」というスローガンが掲げられていた 海士町の役場には「自立・挑戦・交流」というスローガンが掲げられていた

 

海士町へは、島根県の七類港からフェリーで約3時間かけてたどりつきますが、2015年の取材時に同じ船に山内町長が乗っていました。「自分たちでつくった商品を島外で売って、島の収益を増やさないと(※筆者注:山内さんは、これを「外貨を獲得する」と言う)。私はそのための営業マンですよ」と笑いながら話していました。このとき、すでに77歳。島で開発した様々な商品を東京でセールスして戻ってきたところだったそうです。

山内さんが町長に就いた2002年、島は「生きるか死ぬか」という状態でした。1995年(平成7年)に市町村合併特例法が改正され、推進されたいわゆる「平成の大合併」の波は、海士町までやってきました。隠岐諸島島前地域は1つの島が1つの町を構成していて、3島間の往来は本土の移動と比べると格段に不便。行政の窓口をどこかの島に一本化すると、残りの2島は船で窓口へ行かなくてはなりません。町民との話し合いの中で合併はしない方針にしましたが、財政難がそのまま残ります。

山内さん率いる海士町では、まず山内さん自身、そして役場で働く人たちの人件費を削減することから始めました。そして、抑えた経費を未来への投資に充てたのです。その1つが、先述した「教育」でした。職員の給与カット分を使って町内の「子育て支援」のための施策も重点的に展開していきます。

他にも、海士町では新鮮な魚介類が採れるものの、離島であるために市場に着くまでに商品価値が落ちてしまうというハンディがありました。このハンディを克服するため、特殊な凍結技術を導入した農林水産加工施設の整備を行うなど、積極的な投資を行なっていきます。

 

海士町に住むIターンの若い世代の働き手 海士町ではIターンの若い世代が、働き手になっている

 

現在では、多くの優秀な若者たちが山内町長を慕い、海士町を盛り上げるために積極的な活動をしています。筆者がそんな人々と会い印象に残ったのは、山内町長のことを、まるで自分の父親のように話してくれることです。

 

徳島県の過疎の町を、世界が注目するグリーンバレーに

サテライトオフィスやスタートアップ企業の設立を地方自治体が誘致したり、実際に若者が移住したりするということは珍しくなくなりました。この先駆けともいえるのが、徳島県神山町のグリーンバレーです。

仕掛け人はNPO法人グリーンバレーの大南信也理事長です。1953年生まれで、米国スタンフォード大学院修了後、地元である神山町の過疎化を防ぐため90年代初頭より地域活性化を展開し、ワークインレジデンスによる若者や起業者の移住、ITベンチャー企業のサテライトオフィス誘致による雇用の創出などに取り組んでいます。

 

NPO法人グリーンバレーの大南信也理事長 NPO法人グリーンバレーの大南信也理事長

 

大南さんは、ご自身のモチベーションは「せっかくこの世に生を受けたわけだから、自分に与えられたと考えられる役割を果たしたり、自分にしかできないことに力を注いだりすることで、世の中にプラスになることを残したい」という思いにあると話します。

講演や会議に呼ばれることも多い大南さんは、外食が中心になりがち。神山町内にいる時は、できるだけ家で食事を取るように心がけているとか。「いやなことがあった時は、くよくよしないで気持ちをできるかぎり早く切り替えるのが健康のコツかな」とメンタル面の重要性も教えてくれました。

それでも疲れた時には、カウチに寝そべって録画してある『刑事コロンボ』を観たり、自宅の日本庭園の苔庭の手入れや雑草取りをしながら、心を空にするひとときを過ごすようにしているそうです。

そんな大南さんですが、敬老の日に祝福されることについて「うれしくないです!」と強調します。「年配者だからというのではなく、フラットでいきたいと思っています。自身が小さいとき、年配者はすごいことを考えているのだろうと思っていましたが、自分自身がその年齢になって感じるのは『あまりたいしたことは考えていない』ということです。もちろん、しっかりした考えを持つ方も多くいらっしゃるとは思いますが、自分自身はそう感じました。年配になったから双六の『あがり』になるのではなく、年配者も変化をし続け、成長をし続けなければならないのではと考えます」

出身地である神山町の世界的な注目について、大南さんは次のように話します。

「田舎という枠を少しずつ押し広げると、そこに隙間ができる。その隙間を面白がってくれているんじゃないかと思います」

その言葉にある通り、2015年には神山の多様性を体感できる宿「WEEK神山」をオープン。神山町の枠がまた広がりました。

大南さんは、いま一番楽しい時は何かという問いに、「老若男女を問わず、神山町に可能性を感じるという言葉が直接的、間接的に伝わってくる時があります。そんな時、顔では平静を装いながら、心の中では『Yeah!』と叫んでいます。いま一番楽しい時は、そんな時です」と答えてくれました。

 

2015年にオープンした「WEEK神山」 2015年にオープンした「WEEK神山」

 

「ただ、年も年ですから自分自身が先頭に立ってプロジェクトを進めていくにはエネルギーが不足してきていると思います。『創造性ある人』が集まれば、常に時代を切り拓くような先進的なことが自然発生的に起きると考えています。そこで、そうした『創造性ある人』が集まりたくなるようなハード面も含めた場づくりにいそしみたいと思っています」

 最後に大南さんに、今の30代、40代、50代に向けてメッセージをいただきました。

「60代である自分自身も、やることがたくさんあり、忙しく感じています。30代〜50代の皆さんであれば、なおさらまだまだ十分に人生の時間が残されていると思うので、物事に対してじっくり時間を掛けて丁寧に進めることを心がけた方がいいと思います。そのような向き合い方をすることで、結果的に思い描いていることを早く実現できるような気がします」

 

高齢者の知見が日本を変えるエネルギーへ

高齢化社会と言われている日本ですが、多くの30代、40代、50代の方は自分たちがこれから高齢者になっていくイメージを持っているでしょうか? 先述の大南さんも「60代はイメージの外でした」と当時を振り返ります。

これからの高齢者はこれまでの多くの高齢者と違い、海士町の山内町長や、神山町の大南理事長のように祝ってもらうのではなく、多くの人々を牽引する役割を担う存在になるといえそうです。

敬老の日は、「お年寄りの知恵を借りる」ことから始まった日。自分の親や祖父母に、仕事の相談をしたり、将来の相談をしたりする。そして、彼らを通じて自分の老後に対する考え方を変える機会に。それが、これからの敬老の日のありかたではないでしょうか。

メットライフ生命「#老後を変える」編集部 編集長・中村祐介

 

 

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Posted: September 15, 2017