メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2018.2.23この記事の所要時間:約6分

健康で暮らしたい。それは誰もが望むことですが病は突然やってきます。もし、検診でがんの疑いがあると言われたら、それだけで不安になり動揺してしまうかもしれません。しかし医学の進歩によってがんの治療成績は向上してきています。「がん=死」という、かつてのイメージが変わりつつあります。

国立がん研究センターのがん情報サービスによると、現在がんには大きく分けて「手術治療(外科治療)」「放射線治療」「薬物療法(抗がん剤治療)」が三大治療と呼ばれています。

「手術治療」は、外科的治療によってがんを直接取り除く方法です。

「放射線治療」は、放射線の作用を利用してがんを治療します。放射線は、がん細胞が分裂して増えるときに必要な遺伝子に作用するものです。細胞の増殖を抑え、細胞が新しい細胞に置き換わるときに脱落する仕組みを促すことで、がんを消滅させたり、少なくしたりします。

放射線治療は、がんを治すことを目的として単独で行われることもありますが、薬物療法(抗がん剤治療)や手術などのほかの治療と併用されることもあります。手術との併用では再発を防ぐために手術の前後や、膵臓がんなどでは手術中にがんに放射線を当てることもあります(術中照射)。このほか、骨に転移したがんによる痛みを和らげたり、神経を圧迫してしびれや痛みの原因になっているがんを治療するときにも行われます。

「薬物療法」は、細胞の増殖を防ぐ抗がん剤を用いた治療法で、がんが増えるのを抑えたり、成長を遅らせたり、転移や再発を防いだりします。小さながんで転移しているかもしれないところを治療するためなどにも用いられます。手術治療や放射線治療が、がんに対しての局所的な治療であるのに対し、抗がん剤は、より広い範囲に治療の効果が及ぶというメリットがあります。このため、転移のあるとき、転移の可能性があるとき、転移を予防するとき、血液・リンパのがんのように広い範囲の治療のときに行われます。
そして抗がん剤単独での治療もあれば、手術治療や放射線治療などほかの治療と組み合わせて抗がん剤治療を行うこともあります。

がん治療における「先進医療」とは

がん治療は、大学病院や研究機関などで最新医療技術の研究・開発が日々進められています。その中で、安全性や治療効果が確認され、今後の保険診療への導入が検討されている医療技術のことを「先進医療」と呼びます。

先進医療は厚生労働大臣が認めたもので、実施される医療機関も限られています。そして先進医療にかかる費用は全額自己負担になっており、医療の種類や病院によって金額は異なります。

「先進医療にかかる費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料など)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。つまり、一般保険診療と共通する部分は保険給付されるため、各健康保険制度における一部負担金を支払うこととなります。

そして保険給付にかかる一部負担については、高額療養費制度が適用されます。手術や入院などにより、1カ月の自己負担額が一定を超えないように、高額療養費制度というものがあります。高額療養費制度は負担上限が決められており、自営業の国民健康保険でも、会社員の健康保険でも利用できる制度です。もちろんがんの治療も給付対象です。高額療養費制度は、健康保険が適用される3割負担(70歳以下)で算出された治療費が自己負担限度額を超えたら支給されます。

例えば、総医療費が100万円かかり、そのうちの先進医療部分が20万円だった場合は費用負担はこのようになります。

 

先進医療にかかる費用の例

 

先進医療に係る費用の例
出典:厚生労働省Webサイト「先進医療の概要について」を基に作成

「がん治療」といってもその種類はさまざまで、健康保険給付の対象となるかで費用も大きく違ってきます。がんになったとしても、健康保険や高額療養費制度が適用される治療のみですめば、がん治療は高額にならないケースもあります。しかし、先進医療などの費用は全額自己負担となるため想定を超える費用が必要となることもあるのです。

厚生労働省によると平成30年1月現在では、101種類の先進医療の技術があります。そして同省のWebサイトには、各先進医療の概要と認定された医療機関の一覧が載っており、適宜更新されています。

全額自己負担となる先進医療ですが、先日朗報がありました。

粒子線治療の保険適用拡大 前立腺と頭頸部のがんに

2018年1月厚生労働省は先進医療であるがん粒子線治療について厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会で了承され、2018年4月から前立腺がんや頭頸(とうけい)部のがんの一部に公的医療保険を適用する方針を決めました。現在は自己負担額で300万円前後かかっていますが、保険適用で患者の自己負担が軽くなります。

粒子線治療は、放射線治療の一つ。通常の放射線治療は、光子線である「X線」などが使われていますが、粒子線治療は陽子線や重粒子線などの「粒子線」による治療です。水素の原子核である陽子や、より重い炭素の原子核である重粒子を加速器でビームにし、がん細胞に当てて殺す治療法で従来のX線による治療に比べ、ピンポイントで患部に照射できます。

 

主ながん治療法

 

主ながん治療法
出典:神川県立がんセンター重粒子線治療施設Webサイト「重粒子線治療とは」を基に作成

重粒子線治療を行っている神奈川県立がんセンターによると、重粒子線治療は体の深いところにあるがん組織のみを集中的にたたいて、その手前や奥など周りの正常な細胞を傷つけにくいため、副作用が少なくなるといいます。そして重粒子線は、X線や陽子線などによる放射線治療と比べて、がんを殺傷する能力が強いため、今までの放射線治療が効きにくかった肉腫など難治性のがんにも効果があるそうです。

この重粒子線治療で新たな研究成果が昨年発表されました。
厚生労働省が発表した「平成28年(2016)人口動態統計(確定数)」によると、日本人の死因の原因の1位は「悪性新生物(がん)」であり、死亡原因となったがんの種別では男女ともに「気管支および肺」が1位でした。その肺がん治療についての新たな研究成果です。

早期肺がんの治療は日帰りで、重粒子線の1回照射による治療効果を証明

量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所は、早期肺がんに対する重粒子線治療の1回照射法が有効かつ安全であることを明らかにしました。また、重粒子線治療が日本を含むアジア人に多い間質性肺炎を合併した早期肺がん治療に有用であることを発表しました。

1回照射法の臨床試験は2003年から2012年にかけて放射線医学総合研究所で行われ、1回照射法に最適な線量を検討するため症例ごとに、少しずつ線量を増加する手法が採られました。

全218症例について解析した結果、重篤な副作用がなく、臨床試験のあとで40例については、重粒子線治療を行った場所に治療の2年後までに病気が再発しない割合は96.7%。治療の2年後までに患者が生存している割合は93.7%でした。

 

重粒子線治療 肺がん1回照射後のCT画像。

 

CT画像には照射後にがんが線維化した跡が残っていますが、PET映像(核医学検査の一種)からは影がすっかり消えて、がん細胞が消滅したことがわかります
写真提供:量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所

1回照射法で早期肺がんを治療できれば、がん以外の肺の部分に当たる線量を極力抑えることが可能となるため、日本を含むアジア人に多い間質性肺炎を合併した早期肺がんにも有用な治療になると考えられると、放射線医学総合研究所は発表しています。

そして重粒子線治療では、正常組織に当たる線量を低くして、がんの部分に集中して照射できるので、がん細胞を殺すために必要な線量を一度に照射することにより、治療期間を短期化することが可能だそうです。

治療の短期化は、入院が不要になるなど患者にとっての利点があるほか、治療の効率が上がることでより多くの患者を治療できるためにコストが低減され、治療費の低価格化につながります。

現在、早期肺がんの重粒子線治療は先進医療の枠組みで行われており、患者の経済的な負担が大きい治療法です。しかし、さらにデータを収集、解析をすることにより、将来早期肺がんの重粒子線治療への保険適用の実現が期待されます。

参考資料
神奈川県立がんセンター Webサイト
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 Webサイト
本記事冒頭“重粒子線がん治療の治療室”写真提供:量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所

 

 

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Posted: Feburary 23, 2018